日本の技術力は依然として世界の基盤を支える独占的地位にあるが、1980年代後半の政治的圧力とバブル崩壊後の所有権移転により、日本人が働き外国の株主が利益を得る構造へと変容しており、国同士の対立を煽る言説に惑わされず、この縦の搾取構造を客観的に観察する個人の意識の目覚めこそが真の希望である。
日本の技術力に関する相反する二つの物語が同時に流布している
日本の技術が世界を支えている事実は具体的な数字に現れている。 一方で日本は衰退し世界から取り残されたという正反対の言説も存在する。 日本の技術への称賛と衰退の言説が同時に流れる状況自体に意味が含まれている。
議論の構造を観察することで意識のコントロールから脱却できる
日本が強いか弱いかという議論自体が人々の意識をコントロールする仕組みである。 情報の構造に気づくことで観察者の視点を得られる。 観察者は仕組まれた構造の外側に出ることが可能になる。
スマートフォンの内部には日本の半導体技術が凝縮されている
スマートフォンの外側に海外ブランドのロゴがあっても内部の技術は異なっている。 世界経済の重要部である半導体分野において日本の技術は不可欠な存在である。 半導体チップがなければ現代社会のほとんどの製品は稼働しない。
東京エレクトロンは半導体製造工程の特定分野で世界シェア90%を誇る
東京エレクトロンは半導体製造の塗布現像装置分野で約90%のシェアを握っている。 最先端のEUV露光技術に必要な装置ではシェア100%の独占状態にある。 東京エレクトロンの装置がなければ世界中の半導体工場は稼働できない。
日本企業は半導体素材のフォトレジストで90%超のシェアを占める
回路を焼き付けるために不可欠なフォトレジストを供給する日本企業のシェアは90%を超える。 感光材を作る東洋合成工業は世界シェアの約70%を保持している。 フォトレジストの原料まで日本企業が供給を抑えている。
シリコンウェハーの供給は信越化学工業とSUMCOが過半数を担う
半導体の基盤となるシリコンウェハーは信越化学工業とSUMCOの2社で世界の約57%を供給する。 イメージセンサーではソニーが独占的な地位を築いている。 世界中のデジタル画像の多くは日本製のイメージセンサーを通して記録されている。
村田製作所は世界最小のコンデンサを開発し高いシェアを維持する
電子機器に欠かせないコンデンサにおいて村田製作所は世界シェアの40%を占めている。 車載用コンデンサに限定すれば村田製作所のシェアは50%に達する。 村田製作所は2024年に高い技術力で世界最小のコンデンサを開発した。
日本の衰退説が流布する原因は完成品のブランドが見えないことにある
重要な技術を握りながら衰退と言われる理由は日本企業が完成品を作らなくなったためである。 1980年代には日本製の完成品が世界中で高い評価を得ていた。 現在は消費者の目に触れない部品や装置に特化している。
日本は完成品メーカーから土台を支える供給者へと役割を変化させた
完成品を作る国は交代するが部品や装置を供給する存在は利益を得る構造にある。 日本は産業の土台となる部分を握ることで存続している。 日本は供給者としての役割を果たすことで生き残っている。
1985年のプラザ合意により円高への誘導と輸出価格の高騰が起きた
1985年9月のプラザ合意により1ドル235円だった為替は翌年に150円台まで急騰した。 日本製品の海外価格は短期間で1.5倍に上昇した。 プラザ合意はアメリカの貿易赤字解消のために日本が受け入れた政治的合意である。
1986年の日米半導体協定は自由競争を政治の力で歪めた
日米半導体協定は日本市場での米国製半導体シェアを20%にするよう強制した。 日米半導体協定は性能に関わらず国籍によって購入を義務付ける内容であった。 アメリカは政治力を用いて日本の半導体シェアを抑制した。
1987年の100%関税制裁により日本の半導体企業は縮小を余儀なくされた
レーガン政権は日本製の家電製品などに100%の関税をかける制裁を発表した。 100%関税の結果として日本の半導体企業は工場の閉鎖や研究開発費の削減に追い込まれた。 流出した技術者たちが韓国のサムスン電子の基礎を築くこととなった。
東芝機械COCOM〔ココム〕違反事件は日本企業に対する明確な見せしめとなった
東芝の子会社がソ連に工作機械を輸出した件でアメリカ議員が日本製品を破壊した。 東芝機械COCOM〔ココム〕違反事件は日本の経営者に強い圧力を与えた。 通産大臣が米国へ謝罪に赴く事態にまで発展した。
日本企業は目立つ完成品を避け中身を握る戦略で生存を図った
1980年代に世界を席巻した日本企業は政治的な圧力によって制裁を受けた。 制裁の経験から日本企業は表舞台で目立つことを避け中身を握る適応を選んだ。 中身を握る戦略は生き残るための適応であった。
主要な日本企業の議決権は外国人株主が過半数や拒否権を握っている
ソニーの外国人株主比率は59.14%に達し経営の主導権は日本国外にある。 東京エレクトロンや村田製作所も40%を超える外国人株主比率となっている。 日経平均株価の上位銘柄の多くで外国人株主が事実上の拒否権を保持している。
バブル崩壊後の株価暴落時に日本の優良企業の所有権が海外へ移転した
1990年当時は日本企業同士の株式持ち合いが一般的であり外国人比率は低かった。 バブル崩壊後の不良債権処理のために放出された安値の株を海外投資家が買い集めた。 30年間で日本企業の所有構造は変容した。
日本人が労働し外国の株主が利益を受け取る構造が定着している
技術や労働力は日本にあるが会社が生み出した利益の過半数は配当として海外へ流れる。 日本人が労働し外国の株主が利益を得る構造が成立している。 所有権の移転により日本の技術が生む利益は外部へ流出する仕組みとなっている。
国同士の横の対立を見せることでエリート層の縦の構造が隠蔽される
日本対他国という横の対立を強調することで支配構造が隠される。 世界の各国のエリート層は国境を越えて利益を共有し繋がっている。 一般の人々は歴史や文化の違いを強調されることで分断されている。
感情的な反応を避けて情報を観察することで周波数を一定に保てる
日本を称賛する話も貶める話も人々の意識を外側から誘導する手法である。 情報に一喜一憂せず冷静に構造を観察することが重要となる。 外側の物語に反応せず客観的な視点を持つことが重要である。
希望は国家などの外側ではなく構造に気づいた個人の意識の中に存在する
希望は国にあるのではなく構造を見抜いた一人一人の意識の中に宿っている。 世界中で構造に気づき始めた人々が意識のレベルで繋がり始めている。 観察者の視点を持つ個人が増えることが集合意識を変える変化の始まりとなる。